春の浅草寺での大会に参加していると、テレビカメラや新聞記者のカメラが向けられることがあります。そして実際、その日の夕方のテレビのニュースや、翌日の新聞の東京版などで報じられ、自分が映っていることもよくあって、そのたびに喜んだりしています。
ただ、そうした取材は最初の予選第一試合の頃までなので、せっかく決勝の大舞台に進出しても首尾良く優勝できても、その結果自体が報じられることはあまりありません。かるたの大会では「名人」とか「クイーン」が決まったとか防衛したとかニュースになりますが、投扇興もそういう扱いを受ける日が来るといいですね。
さて、それらの「偶然」の機会ではなく、はっきりと私を取材してもらった経験が一度だけあります。それは1997年3月のこと。朝日新聞の「ウィークエンド経済」でした。
その中に、「会社のうちそと」(現在は「にんげん図鑑」)という欄がありまして、一般企業のサラリーマンで珍しい趣味などを持っている人を紹介していくという趣旨なのですが、私が当時出向していたソフトウェア開発会社の広報部に、その取材があったのです。
そして、広報から全社員に向けて「特技とか珍しい趣味がある人はぜひ取材に協力してくれませんか」という通知があり、試しに「投扇興というのをやってます」という返答を出したら、担当記者(経済部)さんが非常に興味を示してくれて、あっさり私が選ばれてしまったのでした。
こんなぶさいくな顔が全国紙に公開されるのは恥ずかしい…という思いもあったのですが、初段を取ったばかりで自信満々だった時期で、また浅草観光連盟にも念のために相談してみたらすんなり許可され、「説明内容はお任せします」とまで言って頂けたので、取材を受けることが決まりました。
1997年3月14日金曜日の午後3時、本社第1会議室に道具一式と緋毛氈を持参し、取材に臨みました。
参考資料を十分に用意して説明したので、投扇興の由来や源氏物語との関係などは理解してもらえたと思ったのですが、残念ながらできあがった記事には、それでも若干の誤解がありました。ただ、投扇興以外ではマスコミの取材というのは初めてではなかったので、「まぁこんなもんだよな…」と思いましたが。
そして、写真の撮影の時は、かなりの演出が入ってしまいました。
本来なら投席と的まではかなり離れているのに、写真に無理矢理収めるためにものすごく近くに寄せられたり、しかも扇を構えた姿勢でなぜか真っ正面(本来ならやや下向きのはず)を向いて、つまり「カメラ目線」でにっこり笑ってくれ、というのです。できあがった紙面が後で送られて来ましたが、我ながら気色悪かったです(笑)。おまけに、よく見たら、結局は道具が写っていない無難な写真が選ばれてたし…でも気分はそこそこよかったですね。
なお、この時はお手本として何度か投げて技を決めてみせたのですが、記者の人にも手ほどきをして投げてみてもらったら、3投目に早くも花散里を出して、とても嬉しそうでした。
さすがは天下の朝日新聞。投扇興関連を除く友人などには恥ずかしいので一切知らせなかったにもかかわらず「読んだぞ」とあちこちから言われてしまいました。ということは、「普及」という意味では取材を受けたことは成功したとも言えるわけです。めったにない貴重な経験でした。
ちなみに現在でも、朝日新聞の記事検索データベースには、この時の記事と写真が保存されております(^_^;)。
投扇興関連で他に取材を受けた経験というと、2004年5月に発売された、岩波アクティブ新書 No.111 「スロースポーツに夢中!」(酒井青樹・峯岸純子著 777円) があります。こちらは朝日新聞の時以上に、何度も原稿を見せてくださったので、取材だけでなく校正でも協力させていただきました。
また、これは投扇興とは関係ありませんが、前に勤めていた会社で、ソフトウェア開発技術者の一人として仕事ぶりを取材されたことがあります。ダイヤモンド社刊「転機」(千秋敏著、1700円)。もう10年以上前の話なので、さすがにもう絶版になってるかな。
こちらも私の本名が出てくる上に、何だか(よくあることでしょうけど)話が誇張されまくってて、非常に恥ずかしかったですね。当時の同僚からは「何でお前だけこんなに格好よく書いてもらってんだよ」「お前一人で全部やったみてーじゃん!」とか言われまくってしまいました(^_^;)。
2010年3月13日、生まれて初めて渋谷のNHKスタジオに入り、「熱中スタジアム」という新番組の第一回の収録に参加しました。
テレビに「映った」経験は何度かありますが、実際に自分の名前が紹介され、投扇興を説明したり実演したり、タレントさんに投げ方を教えたりなんてのはもちろん初めての経験です。
予定していた内容が全部しゃべれなかったり、実演の際にも1投目にちょっと失敗してしまっているのですが、そこはディレクターさんがうまく編集してくれて(笑)、短い時間の中でわかりやすい内容にまとまっていて、4月9日に放送されたのを見た時は心底ほっとしました。
こちらは番組の公式サイトに載った当日の写真です。司会のオリエンタルラジオ・中田敦彦さんは個人的にファンでもあるので、言葉を交わしたり投扇興の手ほどきをしたりできただけでもいい思い出になっています。
せっかくなので、いろいろ名場面など。