御扇流の試合(百人一首形式)
たとえば浅草の投扇興(源氏物語形式)の試合に慣れ親しんでいると、御扇流の銘定を点式表だけで理解するのは難しいです。私も、日本投扇興保存振興会のサイトに点式表が公開された時、それを見ただけではよく意味がわからなくて、何度もメールで質問してしまったくらいです。
そこでまず、どのように試合を進めていくかを説明します。一度でも実際に体験してしまえばすぐにわかることなのですが、他の流派とは大きく違う点があります。
- 試合を裁く審判・行司のことは、正式には「司扇人(しせんにん)」と呼びます。また、記録を取る人は「書扇人(しょせんにん)」、そして百人一首の歌を読み上げる人は「歌扇人(かせんにん)」と呼びます。
- 枕(的台)の側面には、右回りに「雪」「月」「花」「遊」(雪月花に遊ぶ)の文字が書かれています。そのうち「遊」の面を行司に向けて置きます。
すると行司から見て右側が「花」方、左側が「雪」方になりますので、花方は扇の「花」の面、雪方は扇の「雪」の面が表になるように投げます。また、両者一礼のあと、常に花方が先に投げ始めます。
- 基本的に、投げられた扇は片付けません。そのため、写真のように、試合が進むにつれて毛氈の内外に扇が散らばることになります。

ただし、下の写真のように、扇が枕に立てかかったり、あるいは乗ってしまった場合は(高得点がもらえますが)その扇は片付けることになります。
なお、的(胡蝶)は毎回元に戻します。


- そして、毛氈の上に落ちた扇は、その扇が上に向けている面の文字に応じて「初霜」として1点がもらえます。つまり、花方の人が普通に投げると扇の「花」の面が上になって落ちるので、あとで花方に1点が加算されることになります。
しかし、胡蝶や枕に当たったり、あるいは扇が半回転じゃなくもっと回転してしまったりして、相手方の文字の面が表になってしまうことがあり、その場合は相手に1点が入ることになってしまいます。
さらに「初霜」だけでなく、すでに落ちている扇の上に胡蝶が乗ったりすると、さらに高得点がもらえたりします。それが、扇を片付けない効果の一つです。それについては「御扇流の銘定」を参照してください。
また、すでに落ちている相手方(の面)の扇に自分の扇が乗った場合、下の扇はひっくり返して自分の得点として加算できるようです。
- そういうわけで、なるべく相手の有利にならないようにするためには、扇は手前ではなく枕より向こう側に飛ばした方がいい、などといった、攻防というか作戦の面白さも加わってくるのが特徴ですね。
- 1回投げるごとに、その形に対応する百人一首の和歌を歌扇人が読み上げます。ただし、一度出たのと同じ歌は読まないようです。
- 扇を投げるとき、頭より上にまで手を引いてはいけません。また、お尻が浮いてもいけません。そういった基本的なマナーをきちんと守れず、それが目に余るようだと、行司の判定により「蝉丸」として過料3点が言い渡されます。
それ以外の詳しいことは、「御扇流の銘定」を参照してください。
