百人一首形式
こちらは、使う道具からして、宮脇賣扇庵さんで普通に投扇興セットとして売られているものとは違うようです。
枕は漆塗りの大きめのもの、一方、扇は小さめのもので、蝶の形も違っていたとか。実際に見てきた知人の話からすると、どうも「戸羽の会」で製作しているもののような印象です。実物をぜひ確認して来たいと思っております。
ただ、「投扇会」でも、よきひ形式の優勝者と源氏物語形式の優勝者による決勝戦ということで、つまり2人しか体験できないわけで、おそらく見学する機会だけでもあれば十分ということになるでしょうね(^_^;)。
現在のところ私が知っている範囲では、試合の進め方は「戸羽の会」で行なっている百人一首形式と非常に似ているようです。ただし、微妙に違う点もありますので、共通点も含めて、ひとまずわかっていることだけまとめてみます。
- 試合の前や、投げるたびに、審判によって百人一首の中の和歌が詠みあげられる。
- 扇は6本投げて場所を交代し、合計12回投げる。
- 先攻後攻は扇拳で決める(これは他の形式と同じ)。
そして、一回一回の投げた結果だけでなく、開始前後にも銘と得点が与えられます。ここの扱いが「戸羽の会」で行なわれている百人一首形式と異なる点です。ぜひ比較してみてください。
- まず、「参加賞」のようなご褒美として、3点が与えられます。銘は「初霜」です。したがって、
心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花
が必ず詠まれます。
ただし、続く1投目に得点のある技が出せなかった場合は、その3点は没収されてしまうようです。というより、「初霜」がよみあげられた後、1投目に得点のある技が出せれば、その点数に3点のボーナス得点がもらえる、ということでしょうか。
- 12投ずつが終わった後、最後に「松山」が詠まれます。
契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 浪こさじとは
その後、12投目に得点を得ていた側には、さらに2点が与えられるようです。
扇が蝶に当たれば、もちろんほとんどは点数がもらえます。
ただし、源氏物語形式との大きな違いは、形によっては(ちゃんと蝶を落としているのに!)過料になってしまう場合があることです。
- 蝶が先に落ちて扇がゆっくり降りた場合は、都御流の源氏物語形式や浅草で言うところの「夕霧」や「鈴虫」になりやすいわけですが、そのように扇の下に蝶が潜り込んだ形を「雲隠れ」と呼び、2点減点となってしまいます。
めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな
しかも、仮に扇の下で蝶が立っていて「蓬生」の形になっていたとしても、百人一首形式ではやはり「雲隠れ」で2点減点になるそうです。
(余談ですが「戸羽の会」では、源氏物語形式でもこの形を過料2点とするそうです。銘は「末摘花」ですが、もちろん都御流や浅草とは意味が異なります)
扇が蝶に当たらなかったら、源氏物語形式では「手習」として0点になりますが、百人一首形式では扇の位置によって銘を分けます。
- 扇が蝶の上を滑空して向こう側に飛んでいってしまった場合は「村雨(むらさめ)」になります。
村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧立ちのぼる 秋の夕ぐれ
- 扇が枕を打って手前に落ちた場合は「由良の門(ゆらのと)」になります。ただし、源氏物語形式のように「過料1点」になるわけではありません。
由良のとを 渡る舟人 かぢをたえ 行くへも知らぬ 恋の道かな
「戸羽の会」の百人一首形式では、この形は「古浪(あだなみ)」としており、「由良の門(ゆらのと)」は「村雨」の別の形に対して与えていますが、どちらにしても無点には変わりありません。
このほかにも、「戸羽の会」の百人一首形式では、都御流の源氏物語形式や浅草で言うところの「松風」や「花宴」に当たる形、つまり「扇がきちんと蝶を落としきれなかった」場合にも過料としていますので、都御流の百人一首形式でも同様のルールがあるかもしれません。機会があったら確認してきます。
