試合の進め方と投げ方について

私が話に聞いている範囲では、都御流で年に4回開かれている「投扇会」では、個人戦3種類と団体戦が行なわれていたそうです。現在も同じかどうか、なるべく早い機会に確認したいと思います。古い情報で申し訳ありません。

個人戦3種類というのは「よきひ形式」、「源氏物語形式」、「小倉百人一首形式」の3つ。
全員が参加できるのは「よきひ形式」と「源氏物語形式」で、それぞれの優勝者によって「小倉百人一首形式」による最後の試合を行なうということで、つまり予選と決勝のような感じでしょうか。

ただし、「よきひ形式」と「源氏物語形式」については、「対戦」ではない所が重要です。
たとえば浅草では、枕および蝶をはさんで2人が向かい合って交互に投げ、必ず「その試合の勝敗」を決するのに対し、都御流の「よきひ形式」と「源氏物語形式」では「勝敗」というのはありません。
1回に投げるのは1人ずつか、あるいは2人が向かい合って投げる場合も、その両者の「勝敗」が大事なのではなく、それぞれの得点を後で全員分まとめて比較することによって順位を決めることになります。

団体戦では、5人1組になり、源氏香の図柄を元にして、蝶を当てる者と当てない者にわけ、宣言してから投げるという趣向で行ないます。


投げる時の姿勢は、前かがみになってはいけません。これは関西の他の投扇興(戸羽の会や、円満院など)でも共通のようで、浅草の投扇興に慣れている方は注意が必要です。
枕から半畳(約90cm…正式には閉じた扇4本分)以上離れた位置に正座し、背中をビシッと伸ばして、脇をきちんと閉めた(腕を伸ばさない)状態で手首だけを使って投げます。したがって、ヒジの角度は45度くらいになるでしょうか?
少々窮屈に感じるかもしれませんが、的までの距離が短いので、これで十分なのです。なお、それでも扇が飛びすぎてしまうような人は、後ろに下がる分には許されているようです。もちろん、その場合も姿勢は保っていなければなりません。


交互に投げる場合、投げる順番を決めるのはサイコロなどではなく、扇拳と呼ばれるじゃんけんのようなもので決めます。
15cm程の扇子を別に用意して、背中や、和服なら袂のあたりで調整して出し合い、その優劣を競うのです。あいこなら何度でも勝負がつくまで繰り返します。
勝ったほうは、先攻か後攻かを決め、さらに初めの場所も決める事ができます。

種類は、閉まった状態、半開きの状態、全開した状態の3種類です。
基本的には多く開いている方が勝ちますが、全開している扇子には、閉まった状態の扇子が勝ちます。要するに、扇子を閉じたのがチョキ、半開きにしたのがグー、開いたのがのがパーと考えるとわかりやすいです。
扇子を桜の花に見立てて、閉じたのがつぼみとすると、半開きはつぼみがほころんだ状態ですから半開きの方が勝ちです。つぼみがやっとほころんだのよりは満開の花の方がきれいですから、半開きと開いたのとでは開いた方が勝ちです。
ですが満開の花は後は散るばかりですから、つぼみの方が楽しみなので、開いたのと閉じたのでは閉じた方が勝ちになる、ということなのだそうです。


扇は、青、黄、赤、緑、紫の色の順番に投げます。前半5投で場所を交代し、後半は後攻だった方から投げ始めます。
下に敷かれた毛繊の右側には目盛が付いていて、陶製の小さな這い子人形が置いてあり、点が入るごとにその人形を進めていって合計得点をカウントします。
最初は自分で進めますが、点数が多くなって人形が真ん中の方にまで行くと、両脇の審判の人が動かしてくれます。

説明だけだとイメージしにくいかと思いますので、機会があったら写真に納めて来ようと思います。最近では、2003年のお正月に杉良太郎さんたちが投扇興に興じる番組があり、そこに登場していました。