「投扇式」という文献に見られる、源氏物語形式の54種の銘定です。
点数は0点から100点まで。手習だけでなく花散里でも0点だったり、蝶が立った形の点数が全体的に低い割に、澪標が55点も与えられるなど、浅草とはだいぶ趣が違っています。
(そして薄雲がたった2点なのに行幸は3点…これは試合展開が全く予想できない…)
ここでは、宮脇賣扇庵で購入できる投扇興の道具についてくる点式(点数表)に書かれている銘定と説明文を表にまとめます。
ただし、しょっぱなの桐壺からしてもそうなのですが、この説明だけでは正しく意味が通じないものもあります(桐壺は蝶が立っていなければならず、事実、絵図もそうなっている。空蝉も説明が足りない、など)。
どちらかと言うと、判定方法は絵で見て学ぶのが主眼で、文の方が補足にすぎないのかもしれません。
なるべく近日中に、絵図も添えるようにします。3月に宮脇賣扇庵に行ったときにご主人にお話を伺ったところ、上村松園画による点式をそのまま転載しても「別にかまわない」ということでしたので、いずれ画像をアップすることも考えています。
帖 | 銘 | 読み方 | 点 | 説明(原文) | 絵図から補足 |
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1 | 桐壺 | きりつぼ | 75 | 扇、箱の上にのる | 蝶は地で立つ |
2 | 帚木 | ほほきぎ | 80 | 扇が蝶とともに箱の上にのる | 蝶は箱の上で倒れる |
3 | 空蝉 | うつせみ | 15 | 扇、箱の向こうに横立ち | 蝶は箱から逆さ吊り |
4 | 夕顔 | ゆうがお | 8 | 扇の地紙の上に蝶 | 扇は地に落ちる |
5 | 若紫 | わかむらさき | 10 | 箱の横に蝶、後ろに扇立つ | 蝶は地で立つ |
6 | 末摘花 | すえつむはな | 2 | 扇より蝶の方が向こうになる | 扇も蝶も地に落ちる |
7 | 紅葉賀 | もみじのが | 4 | 箱の向こうに扇は要を向こうにし、蝶は錘を手前にして蝶親骨の先端にのる | |
8 | 花宴 | はなのえん | 5 | 扇は毛氈上 | 蝶は箱から逆さ吊り |
9 | 葵(*) | あおい | 5 | 要で立って箱によりかかる | 蝶は箱の上に残る |
10 | 賢木 | さかき | 7 | 扇は横立ち、その下に蝶 | |
11 | 花散里 | はなちるさと | 0 | 扇蝶より向こうへ飛ぶのは | |
12 | 須磨 | すま | 10 | 扇は箱の前に逆立ち、蝶は向こう側 | |
13 | 明石 | あかし | 20 | 扇箱の前逆立ち、蝶は立つ | |
14 | 澪標 | みおつくし | 55 | 扇だけ箱の上にのる | |
15 | 蓬生 | よもぎう | 35 | 地紙の下から錘だけのぞく (鈴が地紙の上にのれば50点) |
蝶が扇の下で立つ |
16 | 関屋 | せきや | 1 | 扇が箱の向こうに横立ち | 蝶は箱の上に残る |
17 | 絵合 | えあわせ | 3 | 蝶扇の縁に半ばのる | |
18 | 松風 | まつかぜ | 4 | 扇毛氈上に落ちる | 蝶は箱の上で倒れる |
19 | 薄雲 | うすぐも | 2 | 箱の横で扇蝶の錘を覆う | |
20 | 朝顔 | あさがお | 8 | 扇の骨の上に蝶 | |
21 | 乙女 | おとめ | 65 | 扇も箱の上にのる (要から蝶が逆さ吊りになれば十点まし) |
蝶は箱から逆さ吊り |
22 | 玉鬘(*) | たまかつら | 25 | 箱の横に蝶、向こうに扇要で立つ (蝶で扇をささえると十点まし) |
蝶は地で立つ |
23 | 初音(*) | はつね | 15 | 要が箱の上にかかる (その間に蝶をはさむと五点まし) (要が箱の上からはずれると五点まし) |
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24 | 胡蝶(*) | こちょう | 85 | 扇も蝶とともに箱の上にのる | |
25 | 蛍(*) | ほたる | 5 | 箱の横に扇、要の傍に蝶 | 蝶は地で立つ |
26 | 常夏(*) | とこなつ | 5 | 扇横立ち | 蝶は箱の上で倒れる |
27 | 篝火 | かがりび | 90 | 扇、箱の上にのり、要から鈴で蝶を吊る | |
28 | 野分 | のわき | −30 | 箱をひっくりかえした場合 (ただし蝶が立てば減点なし、すなわち0点) |
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29 | 行幸 | みゆき | 3 | 扇は横立ち、蝶は向こう側 | |
30 | 藤袴 | ふじばかま | 5 | 扇の要が箱の上ひっかかる | 蝶は箱の上に残る |
31 | 真木柱 | まきばしら | 30 | 扇の要が箱の上にかかり、要から蝶が逆さ吊りとなる (鈴が要にからんで下がれば二十点まし) |
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32 | 梅ヶ枝 | うめがえ | 4 | 一直線にならぶ | 箱、扇、蝶の順で |
33 | 藤裏葉(*) | ふじのうらは | 45 | 箱の向こうに蝶、手前に扇、要でよりかかる | 蝶は箱から逆さ吊り |
34 | 若菜上(*) | わかなうえ | 2 | 扇の地紙縁部が箱の上にかかる | 蝶は箱の上に残る |
35 | 若菜下 | わかなした | 7 | 親骨の先端が箱の上にかかる | 蝶は箱の上で倒れる |
36 | 柏木 | かしわぎ | 5 | 扇の要の下に蝶 | |
37 | 横笛 | よこぶえ | 55 | 蝶、扇骨の上に立つ | |
38 | 鈴虫 | すずむし | 8 | 蝶骨の下になる (骨の間から立てば十点まし) |
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39 | 夕霧 | ゆうぎり | 8 | 蝶地紙の下にかくれる | |
40 | 御法 | みのり | 95 | 扇、要で箱によりかかり、地紙に蝶、錘で逆さ吊りとなる | |
41 | 幻(*) | まぼろし | 25 | 親骨の先端が箱にもたれる (扇の上から蝶が逆さ吊りになれば十点増し) |
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42 | 匂宮 | におうのみや | 5 | 箱の向こうに扇、その向こうに蝶 | 蝶は地で立つ |
43 | 紅梅(*) | こうばい | 60 | 扇、箱の向こうに要で立ち、そのうしろに寄りそって蝶立つ | |
44 | 竹河(*) | たけかわ | 15 | 箱の向こうで要立つ (その間へ蝶を挟めば五点まし) |
蝶は地に倒れる |
45 | 橋姫(*) | はしひめ | 30 | 箱の上に親骨の先端がのる、蝶は向こう側 (蝶前にあれば十点まし) |
蝶は地で立つ |
46 | 椎本(*) | しいがもと | 25 | 箱の横に蝶、向こう扇逆立ち | 蝶は地で立つ |
47 | 總角 | あげまき | 10 | 親骨の先端が箱の横にもたれかかる | 蝶は地に倒れる |
48 | 早蕨 | さわらび | 4 | 箱の向こう側に蝶、その向こうに扇 | 蝶は地で立つ |
49 | 宿木 | やどりぎ | 8 | 扇は横立ち、箱の前に蝶 | 蝶は地に倒れる |
50 | 東屋 | あづまや | 5 | 箱の向こうに蝶 | 蝶は地で立つ |
51 | 浮舟 | うきふね | 20 | 箱の向こうに扇落ち、地紙の上に蝶 (箱の前ならば十点まし) |
蝶は扇の上で立つ |
52 | 蜻蛉(*) | かげろう | 45 | 箱の向こうに蝶、そのうしろに扇、要で立つ | 蝶は箱から逆さ吊り |
53 | 手習 | てならい | 0 | 扇毛氈上に落ちる (ただし箱に当たると減点一点) |
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54 | 夢浮橋 | ゆめのうきはし | 100 | 箱と蝶の上に扇が橋をかける | 蝶は地で立つ |
銘の脇に(*)があるのは、現在の浅草にはない残りの14種です。
点数だけでなく、解釈も浅草とはだいぶ違う部分が見られます。また、「この場合はどれになるんだろう」という疑問も出てくるのですが、何しろ都御流の例会に行くチャンスがなかなかないので、いつ解決できるかわかりません。
今年中に一度でも参加できればと思っています。