タイトルは「儀礼文化学会式 投扇興点式表」。
全部で13通りの形が絵と名前(ふりがな付き)と説明文、点数で示されており、実際の試合で使えるように、名前や得点、対戦相手の名前と得点、そして日付も入れられるようになっています。
得点は低い方から高い方へ、だんだんと紙の中心に向かう渦巻き状に配置されています。また、下段に解釈の注意事項と、試合中のきまりごとまでこまごまと書かれています。特に興味深いのは、同点の場合のきまりです。浅草では決着が付くまで「追投」、つまりサドンデスに入るわけですが、こちらのルールでは「高い銘を出している方が勝ち」なのです。これはなかなか面白いと思います。ただし、それでも同点の場合はどうするかは不明です。
(右端に、浅草や「投扇之記」で該当する銘を参考に示してみました。)
(「天覧山の勝」だけ、なぜか「花」と「蝶」の表記が混在していますが、そのまま転記しました。)
名前 | 読み方 | 点数 | 説明文 | 浅草との対比 |
---|---|---|---|---|
手習 | てならい | 無点 | 蝶が倒れもせず、落ちもしない 枕を倒してしまった |
手習 野分 |
牛島のふじ | うしじまのふじ | 10点 | 扇は落ちている(場所は不問) 蝶は枕の上で倒れている |
松風 |
両神山のつつじ | りょうがみさんのつつじ | 20点 | 扇は落ちている(場所は不問) 蝶は落ちて倒れている |
花散里、末摘花、夕霧、鈴虫など |
田島ヶ原の桜草 | たじまがはらのさくらそう | 30点 | 扇は枕によりかかっている[注1] 蝶は落ちて立ち・倒れどちらでも |
行幸、須磨、若紫など |
狭山の茶 | さやまのちゃ | 40点 | 扇は枕によりかかっている[注2] 蝶は枕の上で倒れている |
若菜下 |
中津峡の紅葉 | なかつきょうのもみじ | 50点 | 扇は落ちている(場所は不問) 蝶は扇に乗っている[注3] |
夕顔、朝顔 |
玉淀の勝 | たまよどのしょう | 60点 | 扇は落ちている(場所は不問) 蝶は落ちて立っている |
早蕨 |
黒山三滝 | くろやまさんたき | 70点 | 扇は枕の上に乗っている 蝶は落ちて倒れている |
澪標 |
越生の梅林 | おごせのばいりん | 70点 | 扇は枕の上に乗っている 蝶は落ちて立っている |
桐壺 |
御嶽の鏡岩 | みたけのかがみいわ | 80点 | 扇は要を下にして枕に寄る[注4] 蝶は立ち・倒れどちらでも |
竹河 |
天覧山の勝 | てんらんざんのしょう | 80点 | 扇が花の上に乗っている 蝶は立っている |
比翼 (もしくは帚木) |
長瀞の岩畳 | ながとろのいわだたみ | 90点 | 扇は枕と蝶の間にはいる 蝶は倒れている |
連理だが蝶は寝ている形 |
氷川の杜 | ひかわのもり | 100点 | 扇は枕と蝶の間にはいる 蝶は立っている |
連理 |
注1)要下の部分だけで寄りかかっていれば「御嶽の鏡岩」になる
注2)どのような形でも、寄りかかっていればよい
注3)蝶の頭の部分が完全に扇の上に載っていること
注4)要下以外の部分が床に着いていたら「田島ヶ原の桜草」になる
きまり
1)投人と枕の間は扇5本分
2)正座をしてお尻を浮かさない
3)扇の持ち方・投げ方は自由
4)同点の場合は、上位の点式による得点をしている者が勝ち