東京・人形町の新扇堂で「投扇興用」として購入できる扇には、投扇興のやり方の全てがびっしり書かれています。
しかし、ここの扇に書かれている投扇興の銘定は、上方の源氏物語形式でも江戸の百人一首形式でもありません。「投扇式」および「投扇之記」という古い書物に見られる、独特の形式を採用しています。
注)
ここでいう「投扇式」は、投扇興の起源が書かれている「投扇興図式」の別名の「投扇式」とは別の書物で、著者は「珍々居士」となっています。
同じく珍々居士著の「投扇之記」は、内容も全く同じであることから珍々居士著による「投扇式」を改題したものと思われ、投扇興図式と区別するためにも、このコーナーでは「投扇之記」の書名を用いることにします。
もちろん、新扇堂で売られている扇に印刷されている説明の文体は現代語で、わかりやすく書かれています。なお、的は「蝶」ではなく「花」と呼ばれています。
この形式を採用して定期的に投扇興を楽しんでいる愛好会、もしくは流派のようなものが存在するかどうか確認できていないのですが、他の流派とは全く銘定の趣が異なることと、銘定以外の他のルールについてもかなり詳細までわかっています。
一度、この銘定と道具で一通り遊んでみたいものです。