「毎日グラフ」昭和26年11月10日号より

昭和26年の毎日新聞の写真と、同時期の「毎日グラフ」に、当時の歌舞伎座の楽屋で投扇興が大流行している様子が見開き2ページに渡って特集されています。
(何しろ写真が主体の雑誌で、肖像権とかがややこしそうなので、ここでは文字の部分だけをご紹介します)
表紙は、昭和25年前後に活躍された女優の沢村晶子さんです。

記事部分

風流 投扇興
「投扇興」とよばれるこの遊戯は、読んで字のごとく、扇を投げて遊ぶという、まことにみやびた、古風なあそびである。
いずれ、そのむかし、殿上人たちが、つれづれごとに始めた遊びらしいが、その「投扇興」が、この頃歌舞伎座の楽屋で復活している。
「投扇興」が歌舞伎の楽屋あそびに入れられた歴史は、たいして古いことではないが、先代の羽左衛門や菊五郎が元気だった昭和初年のころがもっとも盛んだったらしく、こんどの復活は廿年ぶりという。競技の方法は、いたって簡単、東西に分れた二人の選手が、五本の扇を的に向って交互に投げ、盤上に落ちた扇と的の位置によって、得点をきめるといったもの。
さて復活した歌舞伎座の投扇興は相撲なみに毎日取組みの番付があって、古式通りにやるという本格的なもの。女形、立役と幕間に扮装のまゝ競技場へかけつけるという楽屋らしい風景もあって、このところ歌舞伎座の楽屋の話題は、浮世のパチンコ熱をよそに「投扇興」でもちきっている。

英文

The classic game of "Tosenkyo" is said to have been enjoyed by lords in ancient times. Now it is quite a fad in the green room of Kabuki theaters.This indoor recreation was also very popular in the early Showa Era.

各写真のキャプション

・ちとエケチットすぎますぞ 藤風関(尾上松緑)
・つい襲名披露の型になりがちで……帰郷山席(岩井半四郎)
・紅白の縵幕を張りめぐらした歌舞伎座のケイ古場では 投扇興の白熱戦が展開中 猿之助(左)の仕切り 慎重をきわめています
・あられもなき姫御前とそしらばそしれ 魁関(中村福助)
・これぞこれ投扇名人大上段の段なり 玉光関(阪東彦三郎)
・イデ目にものを言わせん風情なり 伊勢ノ海関(市川海老蔵)
・一投必殺 音無しの扇法でゆくか 鬼薊関(市川猿之助)
・楽屋の廊下に張り出された番付と取組表
・扇はなんにもいえないけれど…音羽山関(尾上梅幸)
・さて今度は五代目型でゆくとするか 紅葉川席(市川男女蔵)
・扇と的が盤面と的台にかかった角度によって得点の種類が決められているが その名称は夕桐 さか木など源氏物語に由来したもの


以上、誤字等があっても全て原文ママです。「エケチット」など。

資料提供:石橋俊彦さん(じゃが連) ありがとうございます。