「書斎」昭和2年1月号より
〜概要と目次〜

東京市麻布にあった「書斎社」から発行されていた雑誌「書斎」(大正15年〜昭和8年)の昭和2年1月号は、丸々一冊全部が投扇興の特集号になっています。
江戸時代の古文書とかは別にして、こうして活字になった近現代において「投扇興のことしか書かれていない書物」というのは、実はかなり珍しいです。
著者は「谷川樂石」とありますが、こちらの報告によるとどうやらペンネームで、実は考古学者の大場磐雄博士のようです。ただ、「大場」は昭和3年から相続した母方の姓で、昭和2年当時はまだ「谷川磐雄」だったそうです。1899年生まれということで、この書を著した当時はまだ20代後半の若者でした。

他の文献と同じく投扇興の歴史から入って、道具の説明、遊び方の説明、銘定の説明…と紹介されていますが、特筆すべきは「投法指南」や「点の出し方」があることです。
つまり、「こう構えて、ここを狙って投げるとよい」「この型を出すにはこう投げるとよい」という、著者の経験に基づく具体的なアドバイスが書かれているのです。もっとも我々現役のプレーヤーからすれば、そういうのは全く主観的なもので、それこそ扇一本一本の違い、投者の体格の差によって全然違ってきてしまうので、結局はひたすら練習して自分でつかむしかないのですが、とにかくこうして一人の投者の意見が活字になって残っているというだけで注目に値するし、それなりに参考にもなります。
たとえば、最後の方のページにある次の一節など。

くりかえしていふが苟(いやし)くも扇を打つ時は、眞面目に蝶を狙ひ眞劍で放たなければならぬ。滅多打ちはむしろ害になる。狙ひを定めて放てば必ず當(あた)るといふ信念を持つてゐてもらひたい。

初心者に限らず、調子が落ちて調整中のベテランなどに取っても肝に銘じたい言葉です。


目次は次のようになっています。

  1. はしがき
  2. 起原と沿革
    (イ)雑芸流行の世相
    (ロ)投壺から投扇興
    (ハ)関西から江戸へ
    (ニ)流行と禁止
  3. 遊具の名称と変遷
    (イ)台
    (ロ)蝶
    (ハ)扇子
  4. 投席と投法
    (イ)投席の設備
    (ロ)投法指南
  5. 採点法
    (イ)銘の変遷
    (ロ)賞罰その他
  6. 点の出し方
  7. 終りに

これから本文をご紹介していきますが、この目次と同様、「臺」→「台」「藝」→「芸」「變」→「変」「點」→「点」など、基本的に旧字体ではなく新字体にしています。ご了承ください。振り仮名は原文には一切入っていませんが、私の判断で適宜入れています。


資料提供:石橋俊彦さん(じゃが連) ありがとうございます。