投壺について

 「投壺(とうこ)」は奈良時代に中国から伝来した遊戯で、「つぼうち」「つぼなげ」とも称されました。もっとも「読んで字の如く」というわけではありませんで、「壺を投げる」のではなく「矢を壺に投げ入れる」遊びです。
 ごく簡単に紹介すると、2人の競技者が何本かずつの矢を持ち、一定の距離の所に置いた壺に交互に矢を投げ入れて、入れた矢の本数と形で勝敗を決める遊戯です。天明・寛政(1781〜1800)の頃に流行しました。
 ただし、その「形」がものすごく複雑で、たくさん決められています。

 中国では周の時代から行なわれ、『礼記』にその礼式が記述されており、上流階層の宴席などでの遊びでした。日本には7世紀までに伝えられ、唐の時代の中国製の壺や矢が東大寺の正倉院に現存しています。「源氏物語」や「枕草子」に投壺に関する記述があると聞いたことがあるのですが、残念ながらまだ確認できていません。
 また、浅草の春の大会「雅の会・投壺と投扇興の集い」では、現代の日本では唯一、投壺の実演を見せて頂くことができます。

 

 ほか、京都の霊鑑寺にも投壺の道具(作者不詳 江戸時代後期)が保存されています。こちらは伝法院で披露される物よりかなり小型(口径9.0 胴径14.0 高25.0)です。
 また同じく京都の宝鏡寺にも投壺が伝えられており、今年(2001年春)の人形展を見学に行ったら、等身大の平安女性の人形数体が投壺で遊んでいる光景が展示されていました(写真撮影禁止だったのが残念です)。

 ちなみに正倉院の投壺具は、口径7.4cm、高さ31cm、重さ5.474kgだそうです。矢の長さは74cm前後で、「主客4本ずつの矢を持って行った」と記録に残っています。
 その他、仙台市の博物館では、常設展で投壺を展示しているようです。「武士や裕福な家の子どもたちが遊んだ室内のゲームに挑戦してみませんか。」ということで、つまり、実際に遊べるのかもしれません。
 常設展観覧料として、一般400円、高校生200円、小・中学生100円が必要です。30名以上の団体は各2割引です。
 (余談ですが、インターネットで検索する時は、「投壺」と「投壷」の両方で調べてみるといいです)


 ところで、韓国のガイドブック(「ブルーワールド・ガイド 韓国」)の表紙の裏の写真に、投壺に興じている人の写真がある、という情報を友人から聞きました。
 そこで、韓国の投壺(トゥホ)について調べようと思ってインターネットで検索してみたら、「'98韓国新正月旅行記」というページの3枚目の一番下に、ある宮殿の広場で(つまり屋外で!)投壺が行なわれている様子が紹介されていました。何しろ屋外ですから正座などはしておらず、立ったまま投げ入れています。それだけ庶民的だとも言えましょう。
 このページの作者のPaizaさんから、その写真の掲載の許可を頂けましたので、ここに紹介させて頂きます。

 

 このページの他にも、「投壺」で検索すると韓国に関連した所がたくさんヒットします。日本の投扇興がお正月遊びとして生き残っているのと同様に、日本では廃れてしまった投壺が韓国ではお正月の伝統的な遊びとして今に伝えられているというのは驚きです。
 日本に投壺が伝えられたのは中国からということでしたが、朝鮮半島にいつ頃から伝わったのかはまだよくわかりません。

なお、上記のPaizaさんのホームページはこちらです。
Paizaの世界の旅情報」http://www2s.biglobe.ne.jp/~paiza/index.html


(2009年4月15日追記)
公開中の映画「レッドクリフPart.2」の中に、投壺のシーンが出てきます。

(2009年5月15日追記)
5月14日にBS朝日で放送された韓国ドラマ「張禧嬪(チャンヒビン)」第74話の最後の方で、王妃や王子などが側近に囲まれながら野外で投壺をしていました。
宮殿の庭に筒状の壺の様なものを置き、矢を順番に投げ入れてました。失敗すると、罰として顔に紙製の花びらをはっていました。日本の羽つきの墨塗りと違い、宮廷の遊びは罰も花びらとは優雅なものです。ドラマは17世紀の李朝が舞台となっています。