八嶋流の銘定

「八嶋流の点式」に述べたように、一つ一つの銘には詳しい由来が紹介されていますが、ここでは投扇興の遊び方という側面に限定して、他の流派でよく見られる源氏物語形式、特に浅草で用いられている銘定と対比しながら、その形をまとめていきます。

番号 読み 得点 形態 浅草の銘定との対比
1 屋島の禿狸 やしまのはげだぬき 参加賞3点
2 弁慶 べんけい 過料10点 蝶、枕、扇全て倒れる 野分
3 総門跡 そうもんあと 過料2点 蝶や枕に当たるものの、鈴は鳴らず (コツリ、手習)
4 相引川 あいびきがわ 過料1点 枕か蝶に当たり、鈴が鳴る (コツリ、手習)
5 祈り岩 いのりいわ 零点 扇子がどこにも当たらず落ちる 手習
6 景清錣引き かげきよ しころびき 1点 蝶は落ちず鈴も鳴らず、扇は枕にかかって末広がり (藤袴)
7 長刀泉 なぎなたいずみ 1点 蝶は落ちず鈴も鳴らず、扇は枕にかかって両褄上がり (葵、関屋の加点)
8 菜切地蔵 なきりじぞう 2点 蝶は落ちず鈴も鳴らず、扇は枕にかかって横立ち (若菜上)
9 射落畠 いおちばた 2点 蝶は落ちず鈴が鳴り、扇は枕にかかって末広がり 藤袴
10 義経鞍掛松 よしつねくらかけまつ 2点 蝶は落ちず鈴が鳴り、扇は枕にかかって両褄上がり 葵、関屋の加点
11 赤牛崎 あかばざき 3点 蝶は落ちず鈴が鳴り、扇は枕にかかって横立ち 若菜上
12 義経弓流し よしつねゆみながし 4点 扇が蝶を落とし、扇は枕にかからず蝶とも重なりなし 花散里、梅ヶ枝、末摘花
13 源氏が峰 げんじがみね 5点 蝶が落ち、扇は枕にかかって末広がり 行幸
14 太夫黒 たゆうぐろ 5点 蝶が落ち、扇は枕にかかって両褄上がり 竹河
15 船隠 ふなかくし 6点 蝶が落ち、扇は蝶の上に乗る 夕霧、鈴虫、紅葉賀、絵合、柏木
16 弁慶の投石 べんけいのなげいし 7点 蝶が枕の上で倒れ、扇は地に落ちる 松風
17 血の池 ちのいけ 8点 蝶が枕の上で倒れ、扇は枕にかかって末広がり 初音、常夏
18 瓜生が丘 うりゅうがおか 8点 蝶が枕の上で倒れ、扇は枕にかかって両褄上がり 常夏の加点
19 駒立岩 こまだていわ 9点 蝶が枕の上で倒れ、扇は枕にかかって横立ち 若菜下
20 玉虫の姫 たまむしのひめ 10点 蝶が落ち、地に落ちた扇の上に乗る 夕顔、朝顔、紅葉賀、絵合、柏木
21 菊王丸 きくおうまる 11点 蝶が落ち、扇は枕に乗る。 澪標
22 伊勢義盛 いせよしもり 12点 蝶が落ち、扇は枕にかかって横立ち 総角
23 義経 よしつね 13点 蝶が枕の上で倒れ、扇は蝶の上に乗る 帚木
24 平宗盛 たいらのむねもり 15点 蝶も扇も地に落ち、蝶が立つ 早蕨、匂宮、東屋
25 佐藤継信 さとうつぐのぶ 17点 蝶が地に立ち、扇は枕にかかって末広がり 若紫、椎本
26 佐藤忠信 さとうただのぶ 19点 蝶が地に立ち、扇は枕にかかって両褄上がり 玉鬘
27 平能子 たいらのよしこ 22点 蝶が地に立ち、扇は枕にかかって横立ち 橋姫
28 建礼文院 けんれいもんいん 25点 蝶は地で立ち、扇は枕に乗る 桐壺
29 平教経 たいらののりつね 30点 蝶は地で立ち、その上に扇がかかる 蓬生
30 二位の尼 にいのあま 35点 地に落ちた扇の上で蝶が立つ 浮舟、横笛
31 那須与一 なすのよいち 40点 扇が枕に乗り、その上に蝶が倒れる 胡蝶(減点)
32 安徳幼帝 あんとくようてい 50点 扇が枕に乗り、その上に蝶が立つ 胡蝶

個々の銘に添えられている詳しい由来の説明は、ここでは省略しました。